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- ポスト資本主義を探る #2 地方は、「出口」になれるか?
前回の最後に、こんな予感を書きました。AIによって東京への集中はさらに進み、その一極集中は、いつかどこかで爆発してしまうのではないか――。今回は、この予感の中身を書きます。爆発とは何なのか。そして、そのとき地方は何でありうるのか。
AIの未来の話になると、よく出てくる言い方があります。AIが人間の仕事を奪う。人間の労働が要らなくなる。そうなる可能性も、あると思います。ただ、私の予感は少し違うところにあります。
AIを最大限に活用できるのは、資本を持っている側です。資本があるほど高性能なAIを使え、AIを使うほど生産性が上がって、さらに資本が集まる。このループが回る場所は、人と資本と情報がすでに集まっている場所、日本でいえば東京です。東京一極集中はこれまでもずっと続いてきましたが、AIはこの流れを止めるのではなく、むしろ支えて、東京の成長をこの先も続かせていくのではないか。そんな気がしています。
人はこれまで通り、仕事と給料を求めて、東京へ集まり続けると思います。ただ、人とAIが組み合わさって経済がさらに成長した、その先に何があるのか。私は、成長はどこかで人間を置いていくのではないか、と思っています。
AIが「作る力」をいくら伸ばしても、それを買う力が同じだけ伸びるとは限りません。供給だけが先に走っていく。そして、その成長に必要とされる人の数は減っていって、ある日、集められた人の多くが、はしごを外されるように不要になる。
前回の最後に「爆発」と書いた予感は、このことです。
東京で働くというのは、生活のほぼすべてを賃金で買う生き方です。住まいは家賃かローン、食事は買うもの、人とのつながりも職場を通じたものが多くなる。つまり、収入が止まった瞬間に、住むことも、食べることも、つながりも、同時に揺らぐ構造になっています。
もちろん、すでに資産を築けた人は大丈夫でしょう。マンションを買って値上がりした人、貯えのある人は、はしごが外されても生きていけます。問題は、資産を築く前の労働者です。家賃を払いながら働いて、貯えはこれから、という段階の人がはしごを外されたとき、その人には何が残るのか。
しかも、組織の中で長く働いた人のスキルは、大きな分業の中でこそ価値を持つ形になっていることが多い。ループの中では高く評価されても、ループの外に出た途端、使いどころが見つからない。つまり、東京で要らなくなるというのは、単に仕事を失うことではなくて、生きるための手段を丸ごと失うことに近いのです。
それなら地方に帰ればいい、と思うかもしれません。でも、ここに時間の問題があります。受け皿になるはずの地方が、そのときまでに空洞化しきっていたら、帰る先がもう機能していない。仕事がなく、商店も病院も減り、人のつながりも消えている。はしごが外される日と、地方の受け皿が壊れきる日と、どちらが先に来るのか。実は今、この競争が静かに進んでいるのではないかと思っています。
ここで、見方を反転させてみます。
地方の特徴は、土地と家が安いこと、食べ物が近くで作られていること、そして、お金を介さない人のつながりがまだ残っていることです。言い換えると、生きるために必要な現金が、都会より少なくて済む。
賃金がすべての世界では、これは「稼げない場所」という弱点です。前回書いた通り、給与水準の差も、資産価値の下落も、現実としてあります。でも、賃金が当てにならなくなった世界では、同じ性質が「収入が減っても生きていける場所」という強みに変わります。
ただし、この受け皿としての機能は、放っておけば消えていきます。空き家は増えても活かす仕組みがなく、農地は手放され、助け合いの関係は世代とともに細っていく。必要になったときには、もう無いかもしれない。だとすれば、誰かが意識的に、この機能を維持して、作り直しておく必要があるのではないか。
こう考えてくると、ひとつ見えてくることがあります。
はしごを外されたときに生き残れるかどうかを決めるのは、収入の多さではなくて、「生活のうち、賃金の外で確保できている部分がどれだけあるか」です。借金に追われない住まい。一部でも近くで調達できる食。お金を介さずに助け合える関係。
そして、これらはまさに、ポスト資本主義の議論で昔から語られてきたものです。共有財、相互扶助、市場の外の経済。つまりポスト資本主義とは、資本主義が壊れた後に建てる理想の世界ではなく、資本主義と並走させておく、もうひとつの層なのかもしれない。稼ぐためのループはループとして使いながら、そこから切り離されても生きていける回路を、地域に作っておく。
だとすれば、地方の役割も読み替えられます。東京がループの中で稼ぐことに最適化された場所だとしたら、地方は、ループの外で生きる部分を持てる場所。今は「遅れている」と言われるその性質が、いつか「出口を残しておいた場所」と呼ばれる日が来るかもしれません。
はしごが外される日は、来ないかもしれません。技術革新のたびに「仕事が消える」と言われながら、仕事は消えるより形を変えてきた歴史もありますし、仮にそうなっても、国が制度で受け止めるかもしれない。どちらに転ぶかは、わかりません。
ただ、地域の受け皿を維持して作り直しておくことは、はしごが外されたら命綱になり、外されなくても地域の暮らしを良くするだけで、損になりません。どちらに転んでもいいように備えておく。そういう話として考えています。
そして、これは東京への批判でもありません。私自身、リモートで東京の仕事を受けて生活していて、可茂IT塾も、私が東京のつながりで取ってきた仕事で回っている部分が大きい。東京というループの恩恵を受けながら、それでも「もうひとつの回路」について考え始めているところです。
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