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- ポスト資本主義を探る #5 ポスト資本主義は、いつ来るのか?
前回まで、お金で測れない価値の話や、足場の話を書いてきました。
ただ、ここで一度、これまで書いてきたことを、単なる心の持ちようや人間関係の話ではなく、「経済」の話として捉え直してみたいと思います。
ここまで書いてきたことをもとに、私なりのポスト資本主義について整理します。
ここで考えたいのは、足場やつながりが、暮らしの中で実際にどんな役割を果たしているのか、ということです。
経済を、必要なものや支えをどう生み出し、どう行き渡らせるかの営みだと捉えるなら、地域の助け合いや小さな集まりも、十分にその一部です。子どもの見守り、高齢者の世話、知識を教えること、ちょっとした修繕、おすそ分け。これらは全部、市場で買えば値段のつく財とサービスです。実際、家事や育児のような無償の労働を金額に換算すると、評価のしかたにもよりますがGDPの2〜3割の規模になるという推計を、内閣府の研究所が公表しています(*1)。
つまり、経済には少なくとも二つの層がある。値札のついた層と、値札のつかない層。後者はGDPに載らないから「経済ではない」ように見えるだけで、値札がついていなくても、生産は存在している。
足場を複数持つというのも、こう言い換えられます。生活に必要なものの調達先を、市場一本に頼らず、分散させておくこと。これは気の持ちようの話ではなく、ど真ん中の経済の話です。
そのうえで、一番大きな整理がこれです。
ポスト資本主義という言葉を聞くと、資本主義が終わって、その「後」に別の何かが来る、という時間の話に聞こえます。私も最初は、そういうものとして考えていました。
でも、いまはこう考えています。「ポスト」は時間の話ではなくて、序列の話なのではないか。
いまの世の中では、お金のものさしが、すべてのものさしの王様です。教育も、医療も、土地も、人の評価も、最後はお金の数字で測られる。第3回で書いた、お金のものさしに乗るものほど意思決定の場で強い力を持ちやすい、という話は、この王座の話でした。
だとすると、ポスト資本主義とは、資本主義が消えることではなくて、お金のものさしが王座から降りることなのではないか。市場をなくすのではなく、市場が「全部」ではなく「一部」になる。お金は便利な道具として残り続けるけれど、人生や地域のすべてを測る権限は持たない。そういう状態です。
これは、突飛な話ではないと思っています。
経済の歴史をさかのぼると、市場は大昔からありましたが、長い間、社会の一部でしかありませんでした。土地や労働、さらには人とのつながりまでが広く売り買いの対象になったのは、比較的新しいことです。
だから、これはある意味で「回帰」でもあります。昔の社会にそのまま戻るのではなく、市場の外にある営みを、今の暮らしの中でもう少し広げていくという意味で。
ただし、過去の共同体をそのまま理想化することはできません。そこには支え合いがある一方で、古い慣習や役割の押しつけ、人間関係から抜けにくい息苦しさもありました。
必要なのは、つながりに支えられながらも、そこから離れられる余地を残しておくことです。共同体が人を縛るものになれば、それは別の不自由を作るだけです。
ただ、ここで話は一段大きくなります。
市場で買っていたものを、地域の助け合いや自分たちの手でまかなうようになれば、その分の活動はGDPには表れにくくなります。暮らしは変わらず成り立っていても、数字の上では経済が縮んだように見える。
一方で、税や社会保険料は、所得や取引としてお金が動くところから集められます。市場の外で行われる活動は、暮らしを支えていても、制度を支える財源には直接つながりにくい。個人や地域にとっては合理的でも、それが広がれば、国の仕組みとは噛み合わなくなるかもしれません。
暮らしの調達先を市場の外へ広げることと、税や社会保障を維持することを、どう両立させるのか。ポスト資本主義を考えるなら、暮らし方だけでなく、その暮らしを支える制度まで考える必要がありそうです。
いまの時点の、私の仮の答えはこうです。
ポスト資本主義とは、資本主義を壊した後に来る世界ではない。お金のものさしが王様の座から降りて、数あるものさしの一本になった状態のこと。そして、制度との折り合いという大きな問題は残るとしても、それはいつか突然来るものではなく、暮らしの調達先を市場の外へ少しずつ広げるところから、もう始められるものなのだと思います。
もちろん、これは今の時点での仮説で、おそらく今後また変わるでしょう。
参考
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