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- ポスト資本主義を探る #1 資本主義はそろそろ限界か?
岐阜県美濃加茂市。美濃太田駅から歩いて5分のコワーキングスペースで、私たちは仕事をしています。社員は一人もいません。出勤時間もなければ、誰かが誰かの時間を管理することもない。フリーランスの集団・可茂IT塾という場を続けて、もう6年になります。
始まりは2019年。東京で何年か働いて、地元の可児に戻ってきたときでした。一緒にものづくりができる仲間が欲しかった。そして、この地元でITの人材をたくさん育てて、いつか地元からスタートアップを生み出したい。そんなことを考えて、アプリ開発の講座を始めたのが「可茂IT塾」です。
やがて、アプリを作れる人が何人か育ちました。ただ、作れるようになっても、仕事は自分では取ってこられません。それなら私が東京のつながりで仕事を取ってきて、みんなで回そう――そうして可茂IT塾は合同会社になりました。社員は雇わず、誰の時間も縛らず、それぞれが個人事業主として対等に仕事をする。そういう形を選びました。
この形で、6年やってきました。
個々が自由に働くスタイルは、いまも続いています。誰の時間も管理していないし、メンバーはそれぞれのペースで、それぞれの仕事をしています。この点は、最初に決めたとおりにやれていると思います。一方で、地元からスタートアップを生み出す、という当初の目標は、まだ実現できていません。
そんな中で、ちょっと違和感を覚えたことがあります。
可茂IT塾では「CORPBOOK」というウェブサービスを作りました。地元の高校生と地元の企業をつなげて、若い人に地元で働いてもらおう、というサービスです。地元のために、と思って作りました。
ただ、作りながら、冷静に考えてしまったんです。地元の優秀な学生が地元に就職することは、本当にその子の幸せなのか。地元に住めること自体は、幸せだと思います。でも、結局は金の話が避けられません。都市部と地方の給与水準には、どうしても差があります。地元の企業が悪いわけではなく、ビジネスの規模も、お金の集まり方も、構造として違うからです。その差の中で、実家の援助がなければ家を建てることすら難しいのだとしたら、それなら名古屋や東京で働いた方がいいんじゃないか――地元のために作ったサービスが、その問いを自分に突きつけてきました。
これは他人事ではありませんでした。私自身、ちょうど家を建てようとしていたからです。見積もりは想定よりはるかに高く、金利はどんどん上がっていく。私はリモートで東京の仕事をしていますし、経営者でもあるので、収入はおそらく、この地域の水準よりは恵まれている方だと思います。それでも、相当に苦しい金額感でした。だとしたら、地元の給与水準で家を建てるのは、どれほど大変なことなのか。
一方で、東京や、アクセスのいい近郊の街では、マンションを買った人たちに、人の流入で資産価値の上昇が起きています。早く行って、早く買った人ほど、持っているだけで資産が増えていく。逆に地方では、人が減り、土地の価値は下がっていく。同じように働いて、同じように家を買っても、「どこにいたか」で、得られるものがこんなに違う。
このいびつさは何なんだろう。もしかしたら、資本主義という仕組みそのものが、そろそろ限界に来ているんじゃないか。それが、ずっと頭の片隅にありました。
そんなことを考えていた頃に出会ったのが、COTEN RADIOの「資本主義」シリーズでした。
COTEN自身が法人スポンサーを募るにあたって、資本主義的ではないお金の集め方とは何か、を考えたことが出発点になっているシリーズです。資本主義とは何なのかを体系的に理解したうえで、現代のポスト資本主義をめぐる議論や論者たちの理論が紹介され、最後はCOTEN自身が考えるポスト資本主義の話で締めくくられます。詳しくはぜひ本編を聞いてみてください(記事の最後にリンクを貼っておきます)。
一通り聞いて思ったのは、新しい思想に出会った、ということではありませんでした。むしろ、もともと自分の中になんとなくあったものに、「ああ、こういうことだったのかもな」と名前がついた感覚でした。
そして、気づけばこう考えるようになっていました。
30代のうちに、せめて片足だけでも資本主義社会から脱出して、40代はポスト資本主義にチャレンジしたい。
この連載は、その布石の一つです。
なぜ「片足」なのか。
本気で「次」を探ろうと思ったら、まず自分自身が、お金に大きく困らない状態になっている必要があります。日々の稼ぎに追われている状態では、資本主義の外側を探る余裕など生まれません。探ること自体が、稼ぐことに変換されてしまう。
つまり、資本主義の外を探るための準備は、資本主義の内側でしか調達できない。矛盾しているようですが、それくらい、この仕組みは強固にできているのだと思います。
理想は両足です。お金の心配なく、人生を歩める状態。でも、そう簡単にはいかないから、まずは片足。そういう順番で考えています。
「ポスト資本主義」が何なのか、私にはまだ見えていません。
脱成長なのか、コモンズなのか、ベーシックインカムなのか。本で読める答えはいくつもありますが、どれも自分の答えだという実感はまだありません。感じてきた違和感の正体までは書けても、その先に何があるのかは、まだ分かっていません。
ひとつだけ、予感めいたものはあります。これからAIが本格的に社会に入ってくるとき、よく言われるように「人間の労働が要らなくなる」というより、人も資本もAIも、さらに東京へ集まって、集中が加速していくのではないか。そして、その一極集中は、いつかどこかで爆発してしまうのではないか。そのとき、地方で生きる私たちには、何が必要になるのか。
それでも、個人的には、この可茂地域はちょうどいい場所だと思っています。名古屋まで1時間で出られるし、生活に必要なものは一通り揃っていて、不便ではない。都会ではないけれど、田舎すぎもしない。そして、この地域には、「次」につながりそうな種が、すでにいくつか転がっているようにも見えています。
答えを持って語るのではなく、わからないまま、この可茂地域で、活動しながらこれから探っていきます。
なお、この連載で「地方」と書くとき、主に想定しているのは、こうした美濃加茂や可児のような規模の地域です。
COTEN RADIO「資本主義」シリーズ
可茂IT塾ではFlutter/Reactのインターンを募集しています!一定以上のスキルをを習得した方には有給でのインターンも受け入れています。
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